Arduino vs Raspberry Pi vs ESP32 徹底比較 – 初心者のための最適ボード選択ガイド

投稿者: | 2025年7月19日

目次

はじめに:どのボードを選べばいいの?

電子工作や組み込み開発を始めたいと思ったとき、最初に直面するのが「どのボードを選べばいいの?」という悩みです。Arduino、Raspberry Pi、ESP32 – どれも人気で、それぞれに特徴があります。

この記事では、3つの代表的なボードを徹底的に比較し、あなたのプロジェクトや目的に最適な選択ができるよう、分かりやすく解説します。実際の使用例や価格情報も含めて、初心者でも迷わない選び方をお教えします!

3つのボードって何が違うの?

まず、それぞれのボードが何なのかを簡単に理解しましょう。

Arduino(アルドゥイーノ)

一言で言うと: 電子工作の入門に最適なマイコンボード

Arduinoは「マイコンボード」と呼ばれるもので、センサーやLEDなどの電子部品を制御するのが得意です。プログラムを1つだけ実行し、電源を入れるとすぐに動き始めます。

こんな人におすすめ:

  • 電子工作を始めたい
  • LEDを光らせたり、センサーを使いたい
  • シンプルな制御をしたい

Raspberry Pi(ラズベリーパイ)

一言で言うと: 手のひらサイズの小さなコンピューター

Raspberry Piは「シングルボードコンピューター」で、LinuxというOSが動きます。複数のプログラムを同時に実行でき、インターネットに接続したり、カメラで撮影したりできます。

こんな人におすすめ:

  • プログラミングを学びたい
  • IoTプロジェクトを作りたい
  • カメラやディスプレイを使いたい

ESP32(イーエスピーサンニー)

一言で言うと: Wi-Fi・Bluetooth内蔵の高性能マイコン

ESP32は、Wi-FiとBluetoothが最初から内蔵されているマイコンです。Arduinoのように使えて、無線通信も簡単にできます。

こんな人におすすめ:

  • 無線通信を使いたい
  • スマホと連携したい
  • コストを抑えたい

詳細比較表

項目Arduino UnoRaspberry Pi 4ESP32
価格約3,000円約8,000円約1,000円
CPU16MHz1.5GHz × 4コア240MHz × 2コア
メモリ2KB RAM4GB RAM520KB RAM
ストレージ32KB FlashmicroSD4MB Flash
Wi-Fi
Bluetooth
消費電力約50mA約600mA約160mA
電源USB/外部USB-CUSB/電池
OSなしLinuxなし
学習しやすさ⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐

それぞれの特徴を詳しく見てみよう

Arduino Uno:電子工作の王道

良いところ

🟢 とにかく簡単

// LEDを点滅させるプログラム(たった6行!)
void setup() {
  pinMode(13, OUTPUT);  // 13番ピンを出力に設定
}

void loop() {
  digitalWrite(13, HIGH);  // LEDオン
  delay(1000);             // 1秒待つ
  digitalWrite(13, LOW);   // LEDオフ
  delay(1000);             // 1秒待つ
}

🟢 豊富な情報とコミュニティ

  • 世界中で使われているので、困ったときの情報が豊富
  • 書籍、YouTube、ブログなど学習リソースが充実
  • 質問サイトでも回答がもらいやすい

🟢 電子部品との相性が抜群

  • センサー、モーター、ディスプレイなど、ほとんどの部品に対応
  • ブレッドボードでの配線が簡単
  • 電子工作キットが豊富

注意点

🟡 機能が限定的

  • Wi-Fiやカメラは別途必要
  • 複雑な計算は苦手
  • 同時に複数のことはできない

こんなプロジェクトにピッタリ

  1. 温度センサーで室温測定
    • 温度センサーの値を読んで、LCDに表示
    • 設定温度を超えたらブザーで警告
  2. 自動水やりシステム
    • 土壌湿度センサーで乾燥を検知
    • 水ポンプを自動で動かして水やり
  3. LEDイルミネーション
    • たくさんのLEDを美しくコントロール
    • 音楽に合わせて光らせる

Raspberry Pi 4:小さなコンピューター

良いところ

🟢 本格的なコンピューター

# カメラで写真を撮ってメール送信(Python)
import smtplib
from picamera import PiCamera
from email.mime.multipart import MIMEMultipart
from email.mime.image import MIMEImage

# 写真撮影
camera = PiCamera()
camera.capture('photo.jpg')

# メール送信
msg = MIMEMultipart()
msg['Subject'] = '監視カメラからの写真'

with open('photo.jpg', 'rb') as f:
    img = MIMEImage(f.read())
    msg.attach(img)

server = smtplib.SMTP('smtp.gmail.com', 587)
server.send_message(msg)

🟢 多彩な機能

  • ディスプレイに接続して普通のPCとして使用可能
  • インターネット、動画再生、プログラミング学習
  • USB機器(キーボード、マウス、Webカメラ)が使える

🟢 強力な性能

  • 4K動画の再生も可能
  • 機械学習やAI処理もできる
  • 複数のプログラムを同時実行

注意点

🟡 少し複雑

  • Linuxの知識があると有利
  • 設定項目が多い
  • SDカードの管理が必要

🟡 消費電力が大きい

  • 常時600mA程度必要
  • バッテリー駆動には向かない

こんなプロジェクトにピッタリ

  1. スマートホーム制御システム
    • スマホから家電をコントロール
    • 音声認識で操作
    • カメラで防犯監視
  2. 気象観測ステーション
    • 複数のセンサーでデータ収集
    • グラフ表示やWebで公開
    • 過去データの分析
  3. レトロゲーム機
    • 昔のゲームをプレイ
    • コントローラーを接続
    • 家族で楽しめる

ESP32:Wi-Fi内蔵の万能選手

良いところ

🟢 無線通信が標準装備

// Wi-Fiに接続してWebサーバー起動
#include <WiFi.h>
#include <WebServer.h>

const char* ssid = "your_wifi_name";
const char* password = "your_password";

WebServer server(80);

void setup() {
  WiFi.begin(ssid, password);
  
  server.on("/", []() {
    server.send(200, "text/html", 
                "<h1>ESP32 Web Server</h1>"
                "<button onclick='turnLEDOn()'>LED ON</button>");
  });
  
  server.begin();
}

void loop() {
  server.handleClient();
}

🟢 高性能なのに安い

  • デュアルコアCPU搭載
  • Bluetoothも使える
  • 1,000円程度と超リーズナブル

🟢 省電力設計

  • バッテリー駆動に最適
  • スリープモードで超低消費電力
  • IoTデバイスに理想的

注意点

🟡 情報がやや少ない

  • Arduinoに比べると日本語情報が限定的
  • 新しい技術なので、まだ発展途上

🟡 配線が細かい

  • ピンが小さくて配線が大変
  • ブレッドボードでは使いにくい場合がある

こんなプロジェクトにピッタリ

  1. スマホ連携温湿度計
    • スマホアプリで数値確認
    • 異常時はプッシュ通知
    • クラウドにデータ保存
  2. IoT植物監視システム
    • 土壌湿度をリアルタイム監視
    • 外出先からも状態確認
    • 自動で水やり通知
  3. Bluetooth音楽プレーヤー
    • スマホの音楽を無線再生
    • 操作ボタンで再生制御
    • バッテリー駆動で持ち運び可能

用途別おすすめガイド

🎯 目的別選択チャート

「とにかく簡単に始めたい」

→ Arduino Uno

  • 学習リソースが豊富
  • 失敗しても安心
  • 電子工作の基礎が身につく

「本格的なプログラミングを学びたい」

→ Raspberry Pi

  • Python、Scratch等の学習に最適
  • 普通のPCとしても使える
  • AIや機械学習も体験できる

「スマホと連携したい」

→ ESP32

  • Wi-Fi/Bluetooth内蔵
  • スマホアプリとの連携が簡単
  • IoTプロジェクトに最適

「電池で動くものを作りたい」

→ ESP32 または Arduino

  • 両方とも省電力設計
  • Raspberry Piは消費電力が大きい
  • 特にESP32はスリープ機能が優秀

「予算を抑えたい」

→ ESP32

  • 1,000円程度で高機能
  • Wi-Fi内蔵でコスパ抜群
  • 追加購入の必要性が少ない

💰 コスト比較(スターターキット想定)

Arduino スターターキット

  • Arduino Uno: 3,000円
  • ブレッドボード: 500円
  • ジャンパーワイヤー: 500円
  • 抵抗、LED等: 1,000円
  • センサーキット: 3,000円
  • 合計: 約8,000円

Raspberry Pi スターターキット

  • Raspberry Pi 4: 8,000円
  • microSDカード: 2,000円
  • 電源アダプター: 2,000円
  • ケース: 1,500円
  • カメラモジュール: 3,000円
  • 合計: 約16,500円

ESP32 スターターキット

  • ESP32開発ボード: 1,000円
  • ブレッドボード: 500円
  • ジャンパーワイヤー: 500円
  • センサーキット: 2,000円
  • 合計: 約4,000円

実際のプロジェクト事例

初心者向けプロジェクト

Arduino:「スマート照明システム」

// 人感センサーでLEDを自動点灯
int pirPin = 2;    // 人感センサー
int ledPin = 13;   // LED

void setup() {
  pinMode(pirPin, INPUT);
  pinMode(ledPin, OUTPUT);
}

void loop() {
  if (digitalRead(pirPin) == HIGH) {
    digitalWrite(ledPin, HIGH);  // 人を検知したらLED点灯
    delay(5000);                 // 5秒間点灯
  } else {
    digitalWrite(ledPin, LOW);   // LEDを消灯
  }
}

使用部品:

  • Arduino Uno
  • 人感センサー(PIR)
  • LED
  • 抵抗

学習ポイント:

  • デジタル入出力の基本
  • センサーの使い方
  • 条件分岐の実装

Raspberry Pi:「ペット見守りカメラ」

# 動きを検知して写真撮影
import cv2
import datetime
import smtplib

# カメラ初期化
cap = cv2.VideoCapture(0)

# 背景画像取得
_, background = cap.read()

while True:
    _, frame = cap.read()
    
    # 背景差分で動き検知
    diff = cv2.absdiff(background, frame)
    motion = cv2.countNonZero(cv2.cvtColor(diff, cv2.COLOR_BGR2GRAY))
    
    if motion > 1000:  # 動きを検知
        filename = f"pet_{datetime.datetime.now()}.jpg"
        cv2.imwrite(filename, frame)
        send_notification(filename)  # メール通知
        
    cv2.waitKey(1)

必要なもの:

  • Raspberry Pi 4
  • Webカメラまたはカメラモジュール
  • microSDカード

学習ポイント:

  • Python プログラミング
  • 画像処理の基礎
  • ネットワーク通信

ESP32:「スマート植物センサー」

// 土壌湿度をスマホに送信
#include <WiFi.h>
#include <HTTPClient.h>

const char* ssid = "your_wifi";
const char* password = "your_password";

void setup() {
  WiFi.begin(ssid, password);
  while (WiFi.status() != WL_CONNECTED) {
    delay(1000);
  }
}

void loop() {
  int soilMoisture = analogRead(A0);  // 土壌湿度読み取り
  
  // クラウドにデータ送信
  HTTPClient http;
  http.begin("https://api.thingspeak.com/update");
  http.addHeader("Content-Type", "application/x-www-form-urlencoded");
  
  String postData = "api_key=YOUR_API_KEY&field1=" + String(soilMoisture);
  http.POST(postData);
  
  delay(300000);  // 5分待機
}

必要なもの:

  • ESP32開発ボード
  • 土壌湿度センサー
  • ジャンパーワイヤー

学習ポイント:

  • Wi-Fi通信
  • クラウドサービス連携
  • IoTの基本概念

中級者向けプロジェクト

「スマートホーム統合システム」

各ボードの強みを組み合わせた本格的なシステム:

Arduino担当:

  • 各部屋の温度・湿度・照度センサー
  • モーター制御(カーテン、換気扇)
  • 緊急時の安全装置

ESP32担当:

  • 無線センサーノード
  • スマホアプリとの通信
  • 電池駆動の移動可能センサー

Raspberry Pi担当:

  • 中央制御システム
  • データベース管理
  • Webインターフェース
  • AI による自動制御

よくある質問

Q1: プログラミング経験がないけど大丈夫?

A: 大丈夫です!特にArduinoは初心者向けに設計されています。

おすすめの学習順序:

  1. Arduino でLEDの点滅から始める
  2. センサーを使った簡単なプロジェクト
  3. 複雑な制御に挑戦
  4. 他のボードにも挑戦

Q2: どのプログラミング言語を覚えればいい?

Arduino・ESP32: C/C++(簡易版) Raspberry Pi: Python、Scratch

初心者におすすめ:

  1. Arduino のC++(とても簡単)
  2. Python(読みやすい)

Q3: 部品はどこで買えばいい?

おすすめ購入先:

  • Amazon: 品揃え豊富、配送速い
  • 秋葉原: 実物を見て購入可能
  • スイッチサイエンス: 日本語マニュアル充実
  • マルツ: 技術サポート充実

初心者向けキット:

  • Arduino スターターキット
  • Raspberry Pi デスクトップキット
  • ESP32 学習キット

Q4: 失敗したらどうしよう?

安心してください!

  • これらのボードは壊れにくく設計されています
  • 間違った配線をしても、多くの場合は問題ありません
  • コミュニティが活発で、質問すれば助けてもらえます

失敗を避けるコツ:

  1. 最初は付属のサンプルから始める
  2. 配線を写真に撮って記録する
  3. 一度に複雑なことをしない
  4. エラーメッセージを読む

Q5: 将来性はどうなの?

すべて将来性抜群:

  • Arduino: 教育分野で標準的存在
  • Raspberry Pi: 小型PC市場で独占的地位
  • ESP32: IoT分野で急成長中

スキルの応用先:

  • ロボット開発
  • IoTエンジニア
  • 組み込みシステム開発
  • 起業・製品開発

購入ガイド

最初に買うべきおすすめセット

超初心者向け:Arduino スターターキット

Amazon「Arduino Uno スーパースターターキット」

  • 内容:Arduino Uno、センサー類、部品、日本語マニュアル
  • おすすめ理由:すぐに始められて、豊富なプロジェクト例

プログラミング学習重視:Raspberry Pi

Raspberry Pi 5 スターターキット

  • 内容:Pi 4、キーボード、マウス、ケーブル類
  • おすすめ理由:普通のPCとしても使える

IoT・無線通信重視:ESP32

「ベーシックスターターキット」


  • 内容:ESP32、各種センサー、ブレッドボード
  • おすすめ理由:コスパ最高、Wi-Fi内蔵

段階的ステップアップ案

Step 1: 基礎を固める(1-3ヶ月)

  • Arduino で基本的な電子工作
  • LED、ボタン、センサーの使い方
  • プログラミングの基礎

Step 2: 応用に挑戦(3-6ヶ月)

  • ESP32 でIoTプロジェクト
  • スマホアプリとの連携
  • クラウドサービス利用

Step 3: 本格的開発(6ヶ月-)

  • Raspberry Pi で複雑なシステム
  • 複数ボードの連携
  • オリジナル製品開発

まとめ:あなたにピッタリの選択は?

迷ったらこれ!用途別最終おすすめ

🔰 電子工作を始めたい初心者Arduino Uno 理由:情報豊富、失敗しにくい、基礎が身につく

💻 プログラミングを本格的に学びたいRaspberry Pi 4 理由:本格的PC、AI学習可能、将来性高い

📱 スマホと連携したい現代派ESP32 理由:Wi-Fi内蔵、コスパ抜群、IoT最適

🔋 電池で動くものを作りたいESP32 理由:省電力、スリープ機能、無線通信

💰 予算を抑えたいESP32 理由:1,000円台、高機能、追加購入不要

最後に:失敗を恐れずチャレンジしよう!

電子工作やプログラミングは、実際に手を動かしてこそ身につきます。どのボードを選んでも、きっと楽しい発見と学びが待っています。

最初は小さなプロジェクトから始めて、徐々にステップアップしていけば、気がつくと素晴らしい作品を作れるようになっているはずです。

今日から始めてみませんか?

あなたの創造力と、これらの素晴らしいボードがあれば、きっと想像以上のものが作れるはずです!


関連リンク

学習におすすめの書籍

  • 「Arduinoをはじめよう」
  • 「みんなのRaspberry Pi入門」
  • 「ESP32&Arduino 電子工作 プログラミング入門」

この記事があなたの電子工作ライフのスタートに役立てば幸いです。質問や感想があれば、ぜひコメントでお聞かせください!

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